膝関節の構造

膝関節は人体で最も大きな関節です。大腿骨(だいたいこつ)(太ももの骨)と脛骨(けいこつ)(すねの骨)、そして大腿四頭筋(だいたいしとうきん)(太ももの筋肉)と膝蓋腱(しつがいけん)に支えられた膝蓋骨(しつがいこつ)(お皿)の3 つの骨が組み合わさってできています。この3つの骨の表面は弾力のある柔らかな軟骨で覆われ、クッションの役目を果たしています。また大腿骨と脛骨の間にある半月板(はんげつばん)にも、関節に加わる衝撃を吸収する役目があります。 正常な膝関節はスムーズに動き、歩行や方向転換などの多くの動作を行うことができます。

変形型膝関節症について

変形性膝関節症は膝に痛みを生じる代表的な病気です。様々な要因でひざの関節でクッション機能を果たしている軟骨に傷がつくことが原因と言われており、50歳代以上の男女、特に女性に多く、60歳代の女性の約40%、70歳代の女性の約70%)がこの病気にかかっていると言われています。 「変形性膝関節症」にかかると、ひざの痛みのためあまり歩かなくなり、脚の筋肉が衰えていきます。ひざを守っている筋肉が衰えるとさらにひざに負担がかかります。このような悪循環から脱するために、早期に治療を受けることが大切です。早期に治療を受ければ、痛みをコントロールして病気の進行を遅らせることができます。
変形性膝関節症の主な原因
加齢 ひざに負担がかかる期間が長くなる/軟骨に栄養を供給しているヒアルロン酸が加齢に伴い減少する
太りすぎ 人が歩くときには、体重の約3.1倍の負荷がひざにかかるため、体重が重いほどひざに負担がかかる
姿勢 猫背など歩く姿勢が悪い場合に、普通の姿勢で歩くときよりさらにひざへの負担が大きくなる
運動不足 脚の筋肉が衰えてくるとひざの関節に大きな負担がかかる
性別 理由は明らかではないが女性に多く発症するため、閉経などホルモンのバランスも影響していると考えられている

変形性膝関節症の進行度

正常
初期
中期
末期
変形性ひざ関節症は進行度によって症状が変化します。
「初期」では、骨と骨のすき間が少し狭くなり軟骨が減っているのがわかります。「中期」で は、関節軟骨や半月板がすり減り、骨と骨のすき間がさらに狭くなります。「末期」になると 、軟骨や半月板がほとんどなくなり、骨がむき出しになって、骨と骨が直接触れ合うようにな ります。
変形性膝関節症の進行度による症状
初期 ・立ち上がるときに痛む・ひざがこわばる・動き初めに痛む
中期 ・ひざを完全には曲げられず正座しにくい・階段の上り下りでひざが痛む(特に下り)・ ひざに水がたまる
末期 ・ひざ関節の変形も進み、痛みが強くなる・じっとしていても痛む・ひざの曲げ伸ば しが難しい
・歩くときにひざが横揺れする・歩行困難
ひざ痛があって一度も検診を受けたことがない人、もしくは、少しでも違和感がある人は、整 形外科を受診することをお勧めします。

膝関節治療について

ひざの痛みを抑えるために、症状や段階、目的などによって、さまざまな治療が行われていま す。
保存的治療法
運動療法 ストレッチ、ウォーキング、ジョギング、水中運動 など
温熱療法 ホットパック、温湿布、電気・超音波器具、保温目的のサポーター など
薬物療法 消炎鎮痛薬(外用・内用)、ヒアルロン酸注射、ステロイド注射 など
装具療法 足底板、サポーター、装具(ブレース)、杖 など
手術的治療法
関節鏡手術 関節鏡で見ながら、傷ついた関節軟骨や半月板を切除
高位脛骨骨切り術 脛骨の近位部を骨切りし、ひざの角度を矯正
人工膝関節置換術 軟骨と傷んだ骨の表面を切除して人工関節に置換

人工膝関節置換術とは

人工膝関節置換術とは、膝関節の変形が進行して、他の療法での症状改善が難しい場合、関節 軟骨と傷んだ骨の表面を切除して人工関節に置き換える手術です。関節全体を置き換える全置 換型と傷んだ部分のみを置き換える部分置換型があります。人工関節によって、今までの痛み が緩和され、ひざの動きがよくなることが期待されます。

人工膝関節置換術の流れ

疾患のある膝関節
骨の損傷面の除去
人工関節を設置

人工膝関節置換術 術例

人工膝関節置換術では、大腿骨(太ももの骨)遠位部、脛骨(すねの骨)近位部、膝蓋骨(ひ ざのお皿)の関節面のみを人工材料で置換します。膝関節全体ではなく、関節軟骨が存在する 関節表面が置換対象となります。人工膝関節の大腿骨コンポーネントには金属あるいはセラミ ックス、脛骨コンポーネントには金属とポリエチレン、膝蓋骨にはポリエチレンが一般的に使 用されています。
手術前後のレントゲン写真
手術前後の膝関節
リハビリの経過
1日目
3日目
14日目
術後は、できるだけ早く動くように指導しています。手術の翌日には、ベッドから車いすに乗 り移ったり、膝を曲げる練習も始めます。人工関節の目的は膝の痛みを取ることですが、さら に膝をスムーズに動かせるようになるには、術後のリハビリをきちんと行うことが大切です。 中でも、膝の曲げ伸ばし運動は重要で、脚を乗せるだけで自動的に膝を曲げ伸ばしするCPM という機械を使用したり、タオルなどを使ってゆっくり膝を伸ばす運動を覚えていただきます。その後は、平行棒を使っての歩行訓練、次に歩行器で、そして杖を使って歩けるようになれ ば退院可能です。

膝を大事に使うポイント

<体重管理>
体重が重いと、膝や腰にかかる負担が大きくなります。関節や骨の病気にならないためにも、 肥満を解消しましょう。
BMI(Body Mass Index)はボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。成 人ではBMIが国際的な指標として用いられています。健康を維持するためは日頃からBMIを把握 することが重要です。BMIが25以下になるように心がけましょう。
計算
クリア
<膝の周りに筋肉をつける簡単体操>
太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋・だいたいしとうきん)を鍛える方法としては、椅子に座っ て片足をこれ以上は無理というくらい上にあげた状態を30秒維持します。これを5セット程度 行います。筋肉痛が出たら何日か休み、筋肉痛がとれたらまたトレーニングを行ってください 。(椅子に座るのが難しい方は寝ながら片足を上下に動かしても良いです。)トレーニングに よって筋肉に刺激を与え、筋肉痛が起こったら休んでしっかりと筋肉を補修することで、筋力 が向上します。効果的に筋肉をつけるためにおすすめです。

おわりに

痛みや変形のひどい方も安全性の高い人工関節置換手術により充実した日常生活を送ることが できるようになります。
膝の痛みはしょうがない、年だからと諦めず、違和感を感じたらお気 軽にご相談ください。